メモ帳

千葉の田舎で生まれ、東京の出版社で働いている20代。ノンフィクションを中心に、読んだ本や観た映画についてのメモ代わりに書いています。

僕とサンクスの佐藤さんの奇妙な関係について

今週のお題あなたとコンビニ

こんにちは。コンビニには色々と思い入れがあるのでなんか書こうと思います。おにぎりはセブン、パンはファミマとNEWDAYSが好き。

 

まあそれはどうでもよくて、今回は僕と近所のサンクスの店員の佐藤さんとの、奇妙な関係について書きたいと思う。

 

僕は大学に入る前(ちょうど3年前)に引っ越した。新しい家で嬉しかったのは、徒歩30秒の所にサンクスがあることだった。できればセブンやローソンがよかったが、コンビニがあるなら何でもよい。そして案の定サンクスにはお世話になったし、今もお世話になり続けている。

 

大学生である僕の生活リズム的には、やはり夜~深夜にコンビニへ行くことが多い。僕が通う近くのサンクスで深夜シフトを勤めているのが、今回の主役になる佐藤さんである。彼は常に坊主頭で、ネズミっぽい感じの顔つきをした小さな男性だ。ちょこまかと動き回り、仕事をテキパキとこなしている。それもそのはず、深夜は常に彼1人でまわしているのだ。彼はこのサンクスの、夜の主である。

 

僕が住んでいる地域は住宅街なので、特に夜はコンビニを利用する人も少なく静かである。必然的に、僕がサンクスを使うときは佐藤さんと1対1になる。そこで僕は少しマンガの立ち読みをしたり、カップ麺の棚を物色したりして、最後は大抵何かお菓子を買って帰る。滞在時間は5分程度である。佐藤さんは僕の方をたまに見やるが、基本的には自分の仕事に集中している。そして僕がレジに来ると、さっと自分の仕事を中断して会計を済ませる。佐藤さんはレジ捌きも手際が良い。

 

佐藤さん「っしゃいやせー…っ会計、326円になりやす」

僕「えーと、じゃあ526円でお願いします」

佐藤さん「はい、…200円のおつりですねー、ありあとっざしたー」

僕「どうもー(会釈)」

 

そして僕はサンクスを後にする。これが毎週2~3回、3年も続いてきているのだ。

しかしお互いに、相手の領域に踏み込もうとはしない。佐藤さんが3年間も、それもほぼ毎日、サンクスで夜勤に入っているのはなぜか?彼は一体どういう人間で、何をしているのか?確かにそれは少しだけ気になる。でも佐藤さんとそういう話をかわすことは、今後もないだろう。それは、佐藤さんと僕の間にある、「不思議な共犯関係」を壊してしまうような気がするからだ。

僕が引っ越すのが先か、佐藤さんがサンクスの夜勤からいなくなるのが先かはわからない。(おそらく前者だと思うけれど。)

ただ、僕は佐藤さんと会うことがなくなっても、人生のふとした時に「ああ、佐藤さんは今頃何をしているのかな、そもそもまだ生きているのかな」とぼんやり思い出すのだろう。それは友達との楽しい思い出のようなものではないが、なんだか人生の機微みたいなものを感じることができる、悪くない心持ちなんだろうな。

 

めったにはない、何十年に一回くらいしかないかもしれないが、「生きていてよかった」と思う夜がある。一度でもそういうことがあれば、その思いだけがあれば、あとはゴミクズみたいな日々であっても生きていける。…「まんざらでもない」瞬間を額に入れてときどき眺めたりして…(「僕に踏まれた町と僕が踏まれた町」/中島らも)