NIKEとブランド論
NIKEがまた新しいCMをリリースしている、しかもまたカッコいい。
昔よくブランド論の本を読んでいたのだけれど、NIKEはアメリカ式マーケティングでブランド構築している典型的成功例だよね。
C・ロナウドやネイマールなどのスター選手(そもそも自社でサッカーやNBAなどのスター選手を契約できているのが大きい)を使ったクリエイティブ感満載のCMをバンバン流して、「夢」を売る。
NIKEのCMがスゴイのは、伝えるメッセージとそのための世界観が、ずっとぶれていないこと。
常に「エゴイズム」「ナルシシズム」を肯定する姿勢で、どのCMでもヒロイズムを刺激させる。「俺もあんな風になりてー!NIKE使えば、同じようになれるかも!」という気持ちにさせる。若者の感情にダイレクトに訴えかける。それでいて媚びている感じが出ない。「買ってくださいオナシャス(土下座)」「買うといいことあるよ!」ではなく、「ほら、欲しいなら買えよ、待ってるぜ?」的な態度で僕たちを待っている(別に高飛車という意味ではない)。
人で例えるならイケメンでナルシストで、でも笑顔が素敵で憎めないやつ、みたいな。お調子者だけど傲慢ではない。人生で一番得するタイプ。
で、HOWの部分を言及すると、世界観も常にクールでスタイリッシュ。ロナウジーニョの小さな頃のプレイをそのまま使うこともある。若者は皆、ロナウジーニョのプレイとNIKEというブランドを重ね合わせる。別にロナウジーニョはアディダスのスパイクをはいてもプレイに変わりはないだろうけど、そういう問題ではない。(余談だが、アディダスも昔はスタイリッシュ系だった。最近はImpossible is nothingにより合う、「夢は叶う」系のしっとりものも多いが。)
ということで具体例をいくつか。
これは主観で撮っているのが特徴的。アーセナルをチョイスしたのは趣味。
ナイキ CM アーセナル ー オランダ代表 "Arsenal ー Nederlands ...
これはマイケルジョーダンのプレイを見たことあれば「あぁ…!!」ってなる。
【NIKE】 世界で一番カッコいいCM 【LET YOUR GAME SPEAK】 - YouTube
NIKEのブランドが一番よくわかるのがこのCM。
2013年CM ナイキジャパン ナイキベースボール宣誓編 ACCグランプリ - YouTube
ちょっと広告やらPRやらを学ぶと、NIKEの戦略は美しすぎてその裏にあるものに恐怖すら覚える。今はないだろうけど、違法労働とかさせてたしね。バングラデシュの子供たちはどう思っているのか。でも、時代が変わって企業体質自体がブランディングに関わるようになってきたから、その辺はきっちり修正してくるはず。もしくは、もっと複雑にして見えなくさせるかだな…。
でもなんだかんだ言って、僕はNIKEが大好き。だってカッコいいんだもん。人間って結局その程度のいきもの。悲しいけれど。そういう葛藤で今日もエアマックスをはくわけだね。
最後に、僕の中でのNIKEの最高傑作はこれ。かなり最近のやつだけどね。映像技術的なことはよく知らないけど、1カットごとに意図が込められているのが素晴らしい。この映像を見る人にどういうイメージを抱いてほしいかが、深層部分まで考えられている。それでいて表現への落とし込み方も秀逸。ほれぼれする。