映画の感想:善き人のためのソナタ
丁寧に作られた重厚な作品で、アカデミー賞外国語賞を獲ったのも納得できる。テーマ的にもアカデミー賞受けする内容だし。
ただ、神作品とまでは呼べない。なぜなら、物語の核となるドライマンの魂に主人公の心が動かされる瞬間の描写があまりにも少ないからだ。ここが作品の肝となるのに、ほとんど映っていない。
ウルリッヒ・ミューエ(主人公)が劇作家ドライマンの心に感化される過程を上手に描か無い限り、見る側が2人を軸とした作品世界に没入することは不可能である。
主人公がソナタを聴いて感動するシーンこそあれど、その他にドライマンのどのような部分に惹かれていったのかを、もう少し丁寧に描写する必要がある。しかしそうではなかったので、別にドライマンじゃなくても、誰でも心変わりしたんじゃないの?という疑問を抱いてしまった。
グリーンマイルのコーフィじゃないけど、ドライマンの魂がいかに純粋なのかをもっと描写しないと。彼に芸術への思いを独白させたっていいんだし、もっとできることはあったはず。
そこがないから、ストーリーとして理解はしやすいけど共感はしにくかった。
本を使ったオチはまあまあ。