映画の感想:バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)
いやー、久々にすんげえ映画を見てしまった!
現実と虚構の入り混じった構成やショービズ界への批判という観点では、『マルホランド・ドライブ』に通ずる所がある。作品のカラーは全く違うけど。
個人的には、ショービズ界のあり方について描かれているシーンが面白かった。特に、マイケル・キートン(トムソン=主人公)とエマ・トーマス(サム=娘)の会話が秀逸だった。会話後の展開含め、現在のコンテンツ産業が抱える光と闇を巧みに暴いている。
映画観終わった後だから言えることは、プロモーションがとても難しい映画だったろうなということ。実際予告編でも「落ちぶれた男のカムバックストーリー」が押し出されている。確かに話の筋としては間違っていないが、本作品のポイントはそこじゃない。説明が難しいから、ああいう風な見せ方をするしかできないのは理解できる。
うーん、まあそれにしてもあの予告編とかを見てこの映画をチョイスした人は、肩すかしをくらったのではないかな。アカデミー賞受賞作品とは言え、あまりポップな映画ではないし。
というか、この映画がアカデミー賞に選ばれたのはかなり意外だと思う。どう考えても「アカデミー賞受けする」映画ではない。『博士と彼女のセオリー』の方がヒューマンドラマだし実話が基だし、アカデミー賞っぽさはある。それでもバードマンが受賞したのは、それほどのインパクトがあったからなのかしら?
(どちらが良い悪いではなく、アカデミー賞の傾向についてのお話。個人的にはバードマンみたいな作品の方が好き。)
あと最後に1つ。撮影監督のエマニュエル・ルベツキがすげえ!アルフォンソ・キュアロンと組む『ゼロ・グラヴィティ』もすごかったけど、こちらもスゴイ。あちこちで色んな人に書かれているけど、長回しとか引きの撮り方とか。素人でも気をつけて観ればなんとなくスゴさがわかるってことは、相当スゴイんやな。1つ1つのカットに意図が込められているのが、ヒシヒシと伝わった。
そういうわけで「アカデミー賞作品だから見よう!」という気持ちで行くと「あれ?」って感じになるけど、一人で考えながら見るにはとっても良い映画でした。間違いなく後世に残る名作。
―余談
コンテンツ産業ってコンテンツの質と体験価格が比例しないから、こういう良作を1000円で見た時はとても安く感じる。良いものを見せてもらった。
一方で、『ストロ○エッ○』みたいな作品も同じ値段なんだけどね。この辺はコンテンツの質を保護するための方策なので全く持って批判するつもりとかはないんだけど、単純に面白いなあと。