メモ帳

千葉の田舎で生まれ、東京の出版社で働いている20代。ノンフィクションを中心に、読んだ本や観た映画についてのメモ代わりに書いています。

フットボール観戦記:ユベントスvsレアル・マドリー

 

ユベントスチェルシーと同じように大崩れはしないチームで、組織力は極めて高い。だが、やはり個々のタレントという点ではマドリーに軍配が上がる。ユベントスは善戦するもののマドリーが何とか勝ち上がる、というのが大方の予想だろう。個人的にも同感である。

 

しかし、ユベントスは智将アッレグリの戦略が見事にハマった。アウェイゴールを与えないことは大事だが、守備的にいきすぎることもまたリスクである。ユベントスは4バックで後ろから繋ぐスタイルを選択した。そのため支配率も、ややマドリー優勢ながら思った以上には傾かなかった。ユベントスはレアルのプレスを誘い、間延びした中盤をビダルマルキージオの走力で支配することを望んだ。この戦略は2トップの特性も考慮したのだろう。テベスとモラタはスピードに長けた選手だが、空中戦でマドリーのCBに勝つことは出来ない。(そもそもペペ&バランに力勝負で勝てる選手はいないのでは?)

最後尾からのビルドアップで相手を引き出して、中盤を走力で攻略。最後は広いスペースを生かした2トップの地上戦―ユベントスはここに勝機を見出したのである。ユベントスの選手が持つ特性(CB+ピルロの足元の技術&中盤の走力&2トップのスピード)を見事に生かしているあたり、流石アッレグリである。

 

彼の頭の中には、アトレティコとレアルの試合がイメージされていたに違いない。大まかに言えば同じような特徴を持っていたアトレティコは、なぜレアルに負けたのか。それは、失点以上に得点ができなかったからである。アトレティコは180分か通してチャンスらしいチャンスがほとんどなく、いわば「ジリ貧」の状態だった。よく耐えたともいえるが、レアルとの差は明白だった。

おそらくアッレグリアトレティコの戦いぶりを見て、失点しない以上に「どこかで点を取る」ことの難しさを痛感した。そして、最も得点の可能性が高いのは1stレグの前半だと考えた。アトレティコのように受けて立ちすぎると、結局敗退するのは時間の問題である。「勝ち抜く」ためには、リスクを取って攻める必要がある、そして最も点を取る可能性が高いのは1stレグの前半である、と想定したのだろう。

 

アッレグリに幸いしたのは、レアルが「自分たちの強みを活かせば相手は関係ない」というタイプのチームだったことである。彼らは中盤に降りてくるテベスを、全く捕まえられなかった。というか、そもそも捕まえようとしなかった。セリエAの試合を見れば、テベスがどれだけ恐ろしい選手なのかはわかるはずなのに。試合があれだけオープンな展開になったのはもちろんユベントスの姿勢もあるが、レアルがテベス対策を怠ったからだとも言える。

(マドリーとしては、テベスにやられるデメリットよりも、自分達のパフォーマンスを発揮することのメリットを取っているのだろう。だが、別にケディラを使えとかは言わないが、現有戦力でできる範囲の対策はするべきだった。)

 

最後に、2ndレグについて。

2ndレグのポイントは、ユベントスの対応である。アッレグリはどのようなスコアでの勝ち抜けを狙うのか。0-0を目指すようなら危険である。ホームのマドリーを相手に90分間を無失点で切り抜けるには、世界最高峰の技術と集中力、そして運が必要だ。いくらユベントスの守備が堅いとはいえ1stレグでも何度か決定機を作られており、完封での勝ち抜けは難しいだろう。

そのためアッレグリは、守備にベースを置きながらもあわよくば1点を、それも先制点を奪うことが求められる。1点を取りさえすれば、仮に2失点してもPK戦にまで持って行ける。最も恐れるべきは、終盤に失点して0-1で敗戦することだ。

アウェイでレアル・マドリーを相手に無失点で切り抜ける、もしくは1点(できれば先制点)を取る。アッレグリという智将率いるユベントスは、果たしてこのミッションを達成できるのだろうか?

 

鍵になるのは、ビダルマルキージオだろう。彼らが守備に奔走されるのは間違いないが、必ずカウンターのチャンスはやってくる。走力と技術に長けた2人が攻撃面でもテベスとモラタをサポートできれば、得点のチャンスが生まれる。マドリーの中盤は守備力がどうしても落ちる代わりに、CBが非常に堅い。そのため2トップ対2CBの図式ではなく、彼ら2人を加えた攻撃が必要だ。

 

一方マドリーは、先制点を奪われないことが重要である。彼らの攻撃力をもってすれば、90分間で1点を取ることは充分に可能である。だが仮にユベントスに先制点を奪われた場合、「1点に抑えればOK、最悪2失点でも大丈夫」と考える相手から2点以上を奪う必要が生じる。失点は避けたいが無得点でも敗退―レアル・マドリーもまた難しい立場に置かれているのは間違いない。

こちらの鍵となるのは、ハメスだろう。1stレグを見ればわかるように、ロナウドやベイルはかなり対策されており、基本的に2枚でチェックされる。彼らが前を向いて1on1を仕掛ける時間は無いに等しい。ユベントスの堅牢な守備網を崩すにはロナウドやベイルの直線的なプレイではなく、ハメスの意外性と技術になる。

 

1stレグでマドリーが勝ったらつまんねーなと思ってたけど、そうならなかったおかげで俄然2ndレグが楽しみになった。本当にどちらが勝つかわからない。ただアトレティコとのタフな試合を勝ち抜いたことも考慮すると、最後はマドリーが勝ち上がると予想する。うーん楽しみ!