二流社会人のメモ帳

興味のあることを徒然なるままに独りごちる。

2015年個人的に面白かった本たち

 
2015年個人的に面白かった本たち (※今年「出された」本ではなく、今年「読んだ」本)

【新書編】
10位:タテ社会の人間関係/中根 千枝
まあ有名な作品。こうした社会心理学では、山本七平の『空気の研究』も非常に面白い。また、こういった「日本文化論」(『菊と刀』『ジャパン・アズ・ナンバーワン』etc)自体をメタ的に知りたければ『日本文化論の変容』が良い。特に驚きがある内容ではないが、それなりに上手くまとまっている。

9位:目の見えない人は世界をどう見ているのか/伊藤 亜紗
馬場歩きしている時にタイトルと全く同じことが気になって買ったら面白かった。健常者を4本脚の椅子だとすれば、視覚障碍者には3本脚の椅子なりのバランスの取り方があるという着想。こういう考えたかができる人間になりたい。
この本みたいな「人間の可能性」みたいな話は、知的好奇心をくすぐられる。また、障碍者とどう向き合うかという問題にもヒントを与えてくれる。

8位:教養主義の没落/竹内洋
戦前戦後の日本における、若者と「教養」の関係を探っている。これと関連性の高い『「戦争体験」の戦後史』も中々面白かった。正直関心の持たれにくい分野だけれど、一つの歴史として知っておくと案外捗るのかなーとは思う。「教養主義」も「半知性主義」とセットで最近流行りかけているし。それにしても、やっぱり中公新書はクオリティが高い。

7位:資本主義の終焉と歴史の危機/水野 和夫
別に話自体は今更珍しくもないのだが、新書でシンプルによくまとまっている。資本主義の未来とか恐ろしそうだなーってボンヤリ考えている人におすすめ。とりあえずこれだけ読んでおけば、最低限の話はできる。

6位:著作権とは何か/福井 健作
ロゴ問題でガタガタぬかす奴は全員せめてこれは読めと言いたい。同じ著者の『「ネットの自由」vs著作権』『誰が「知」を独占するのか』『著作権の世紀』まで読めば、現代のコンテンツをめぐる環境や諸問題が政治と経済の両面から理解できる。非常に優れた書き手。

5位:コンテンツの秘密/川上 量生
コンテンツ産業にかかわる人はマスト本だと思う。やっぱりこの人は話のオリジナリティが際立っているから面白い。その上でカリスマ経営者にありがちなウザさがない。良い意味で一般人なんだなと思う。ちなみに『ニコニコ哲学 川上量生の胸の内』も面白い。

4位:わかりあえないことから~コミュニケーション能力とは何か~/平田 オリザ
わかりやすく、面白く、深く、ためになる。これぞ新書って感じ。特別何かの専門知が身につくわけではないが、生きる上でとても役立つ。日本語における「対話」の少なさなど、言われると「確かにな~」と納得できる話がたくさん詰まっている。余談だが、この本を読むまで平田オリザは女性だと思っていた…。同じく講談社現代新書で出ている『演劇入門』も面白い。

3位:イスラーム国の衝撃/池内 恵
イスラム国のことを少しでも考えるなら絶対に読むべき本。これを読むのと読まないのでは、イスラム国関連のニュースや議論に対する反応が全く異なる。

2位:差別と貧困の外国人労働者/安田 浩一
在特会」への取材でも知られるジャーナリストによる、技能実習生などへのルポ。この問題は「Made in Japan」礼賛時代の今、一人でも多くの人が知るべき。読んでいて恥ずかしくなる。
(講談社G2での連載は、この本よりも新しい話だしタダで読めるからおすすめ。)

1位:なぜ戦争は伝わりやすく平和は伝わりにくいのか/伊藤 剛
戦争などの政治問題を、コミュニケーションの視点から読み解く本。著者はシブヤ大学などを設立した元広告代理店の人だから、話もわかりやすい。田中先生のメディア論の講義に通ずる面白さ。入門書くらいのレベルだから誰でも理解できる。

【ノンフィクション編】

5位:本は死なない/ジェイソン・マーコスキー
AmazonKindleの開発に携わった著者が語る、電子書籍を中心とした本の未来。何より良いのは、著者が「テクノロジー加速進化肯定派」「情緒執着派」という相対する両方の立場をよく理解し、自分自身もその狭間に立っていること。これは、MITで数学とライティングを専攻した著者の経歴が影響しているはず。
議論のバランスがとれているので、この一冊を読むだけでコンテンツ・メディアの置かれた現状や未来への展望を善し悪し含めて考えることが可能である。こういった二項対立の問題を冷静に、優しく語ることができる立場の人間は貴重である。

4位:裸でも生きる/山口 絵里子
マザーハウス創業者の話。続編の2も面白い。見城徹の『編集者という病い』を読んだ時と同じことを感じたのだが、こういう人は「キ○ガイ」なんだと思う。快楽原則のバランスがおかしくて、他の人と全然違う所にある。その「歪み」を才能と呼ぶなら一種の天才ではある。
だから「この人すごいなあ」と思うのと「自分がそうなりたい」と思う間には絶望的な落差がある。二十歳を過ぎた辺りから「ぶっちゃけこの人の人生は大変そうだなあ…」と感じるのが一般的な感覚ではないかと。(多数派と少数派のどちらが正しいとか優れているとかいう価値判断はないけれど)

3位:中国化する日本/與那覇
ザックリと近年の日本の動向を把握するための歴史教養書。最近の日本の政治経済における様々な改革(あるいは改悪)を包括的に捉える視点が得られる。案外、こういう専門知と一般教養を繋ぐ王道の本って最近は少ないような。

2位:内向型人間の時代/スーザン・ケイン
シャニカマエルマンの必読書。要約だけでも知っておくと役に立つかと(全部読むのは面倒だし)。現代は(残念ながら)「人格」ではなく「性格」の時代、という著者の主張には大いに納得できる。

1位:敗戦後論/加藤 典洋
戦後70年を迎えた今、戦後50年の時点で書かれたこの本が持つ妥当性は(悲しいことに)ますます高くなっている。「ねじれ」の直視、右翼と左翼はジキルとハイド、といった話は本当にその通りである。
一瞬でも戦後日本について考えたいというちょっぴり真面目な気持ちが生まれたら読むべき。白井聡の『永続敗戦論』も、言っていることのロジックは同じだと思う。


【小説編】※近代小説の流れそのものを知りたければ、三田誠広(早稲田出身の芥川賞作家)の『超明解文学史』がわかりやすくてオススメ。

5位:さようなら、ギャングたち/高橋源一郎
最近はSEALDs関連でよく出てくる方だが、その政治的姿勢への賛否とは関係なく面白い小説。正直こうしたポップ文学(って呼ぶらしい)は論理的に考えると意味不明になるので、合わない人にはトコトン合わない。ただ、意味の分からないものを意味のわからないままで「なんとなく」面白いと感じられる人にはオススメできる。Dont'think,feel!ってタイプの作品。

4位:戦争の悲しみ/バオ・ニン
ベトナム戦争に従軍して奇跡的に生き残った、生き残ってしまった著者による戦争文学の金字塔。「悲しみ」「哀愁」という言葉がぴったり。秋の夜長に読みたい一冊。(個人的に、この「悲しみ」は遠藤周作の『黄色い人』で頻出する「疲れ」と似た感覚なのかと思った。)
戦争文学全般で言えば、定番中の定番だが大岡昇平は面白い。

3位:枯木灘/中上健次
被差別部落が舞台だが、決して差別などがテーマになっているわけではない。読んでいて気持ち良い作品ではないしストーリーに抑揚があるわけではないから退屈するかもしれないが、それでも一冊読み終わると不思議な気分になる。三島由紀夫の文章がよく切れる日本刀だとすれば、中上健次は鈍器で殴るような、徐々に重みの伝わってくる文章だと思う。
ちなみに、被差別部落に関しては上原善広のノンフィクション(『日本の路地を旅する』『被差別の食卓』)が面白い。

2位:苦界浄土/石牟礼 道子
『戦争の悲しみ』にも通ずる「人間の尊厳」「魂の救済」という普遍的かつ根源的なテーマを、瑞々しく描き切っている。
解説を読んで確信したが、この人は小説家というよりある種の「イタコ」なんだと思う。だからなのか、読んでいる最中にこちらも作品へ潜っていくような、スポーツでいう「ゾーンに入った」ようなトリップ感覚が生じる。それが長く続くほど「時間を忘れるほど良い作品」になるのだと思うのだが、この作品はその点でベストである。

1位:万延元年のフットボール/大江 健三郎
読みにくいし長いし重いし、あまり人にオススメできる作品ではない。ただ、個人的にはとても好きな一冊。「悪文」とも称される過剰に修飾・倒置がなされた文体に、四国の山奥という閉鎖世界。これらが重なり合って、時代の「閉塞感」「停滞感」が露わになっている。美しいものや爽快感を表現できる人は確かにスゴイが、こうした「不快感」を言葉に変換できる人はもっとスゴイと思う。恋愛映画よりホラー映画を好む人は余計にそう感じるのかも。
「熱い期待の感覚」や「本当のこと」など、自分が感じていたことを言葉に表してくれていて、救われたような気持になった。特に終盤にかけての蜜と鷹の会話には痺れる。