二流社会人のメモ帳

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浦沢直樹とネット空間の文化的遺伝子

よく見てみると、馬場歩きの途中にはラーメン屋やコンビニと同じくらい古本屋がある。中にはAmazonでも取り扱っていない本があるし、100円セールなどもあってブックオフより安い。そして何より、長居してもノータッチな雰囲気が良い。

というわけで、最近は帰り道に暇があれば古本屋へ立ち寄ることにしている。その中で手に取った一冊が、重松清と各界著名人の対談集。池澤夏樹いとうせいこう、是枝監督などへのインタビューが詰め込まれている。

 

なかなか面白い一冊だったのだが、特に気に入ったのが「YAWARA」「MONSTER」「20世紀少年」等で知られる漫画家、浦沢直樹との対談である。個人的に最近気になっている「ネット空間のミーム」についての話が非常に面白かった。

 

浦沢直樹はネット界隈で「可愛さ余って憎さ百倍」というか、面白いものを描くが故に「オチが意味不明」「劣化している」などと、あらゆる批判にさらされている。

そんな彼の、コンテンツ業界におけるマーケティングに関する声にハッとさせられた。

「ネットの世界って、好きなことだけを好きなようにやっている人のことは温かく受け容れるんだけど、『皆さんのもとに届けるには』と考える人には、非常に風当たりが強いんだよね」

当たり前かもしれないけど、言われてみるとその通り。結局、ネットで「ウケる」人や物事って、マーケティング的発想が感じられないことが重要なんだよね。ネット住民(≒鬱屈した人の本音)は「あざとさ」「欺瞞」みたいなものを本気で嫌う。それは、「人の心を動かす」ことが目的であるコンテンツ業界なら尚更である。

こういう、ネット空間におけるミーム(文化的遺伝子)って面白いなーと思う。ミームって言葉が気取っているなら「エートス」「雰囲気」「空気」とかでもいいんだけど、個人的にはこの言葉の方がしっくりくる。

 

本当、押し付けずに伝えるって難しいよね。最近はそのために「共創マーケティング」とか「コンテンツマーケティング」みたいなのが流行っているけど、あれもその内(というか一部では既に)「あざとい」批判がされるだろうからね。

 

だからもう、「これは広告です!」って姿勢を見せた方が逆に好感もたれるんじゃないかな。感じ方は人によるから何とも言えないけど。

 

―余談

この対談の最後に「20世紀少年」の話があって。

個人的にも漫画と映画のラストが違うことについて考えていたことがあった。漫画のラストシーンにかけて「(色々叩かれているけど)真摯に考えて相当悩んだんだろうなあ」と感じて、実際そうだったらしい。なんでかって、万博会場でケンヂが「あの歌」をやらないんだよね。それは「オー・ヘンリー的な話」を避けようとした結果だし、そういう予定調和の物語をケンヂ=作者自身が拒否したかったんだろうなって。それを描くには結構な覚悟が必要だったろうけど。ただ個人的にはすごい理解できるし、だからたとえgdgd感があっても個人的には映画版よりも漫画版の方が好き。

その点、浦沢直樹を<巨大なるマイナー>という対談タイトルで表現した重松清は秀逸だなあ。

 

(読んでない人には伝わらない書き方になってしまったけど)

(ともだちのオチがどうなのよって話は、また別問題だけど)

 

あと、今回の話とは関係ないけど浦沢直樹はこのインタビューが結構面白い。

www.huffingtonpost.jp