二流社会人のメモ帳

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映画の感想:『サンドラの週末』

最近読んだ平田オリザの『演劇入門』の中に、「問いの立て方で物語は決まる」という旨の話が合った。その話では『ロミオとジュリエット』『忠臣蔵』などを例に出し、「自分ではどうしようもない運命を前にして、人間がどう振る舞うか」が演劇の肝であり、その「運命」あるいは「問い」を立てることができれば、後はそれに対する様々な人物の動きを丁寧に描けばよい、というようなことを述べていた。

もちろんこの作り方が当てはまらない作品もあるのだが、「物語」の作り方としてとても納得できるものだった。

 

という観点の下で『サンドラの週末』を観たのだが、問いの立て方にリアリティを欠いているのが少し残念だった。

サンドラの復職か自分のボーナスか、の二者択一への投票を前にサンドラと各従業員がやり取りする、という話の構成自体は良い。サンドラを通じて従業員たちの様々な立場や考えの変化などを描くのも良い。

だが、主任を筆頭に従業員仲間以外の会社の人物たちがこの構成を邪魔している。彼らの悪意に満ちた姿勢を描いてしまうと、「従業員たちが団結して彼らに立ち向かう」という別のシナリオを想像してしまうからだ。

ポイントは、サンドラという一人の命(といえば大げさだが)と自分(と家族)の生活の対立に悩む従業員たちである。ある意味でサンドラは媒介でしかなく、例えばこの葛藤がもとで離婚する同僚などが主役である。

・会社という大きな組織を描くのが余計な論点を引き起こしている

・サンドラの復職が投票で決まることなど、問いの非現実性が解消されていない(どんなブラック企業w)

 

という点が残念だった。こういう『12人の怒れる男』っぽい群像劇は好きなんだけど、個人的にはサンドラの頑張りよりも従業員同士の葛藤を描いてほしかった。(まあそれは善し悪しの問題とはずれるのだが)