フォントのふしぎ
という本がぐう面白い。
LOUIS VUITTONはfutura mediumの字間を空けている。
マイケルのTHIS IS ITで使われたtrajanはトラヤヌス帝記念柱の文字を忠実に再現している。
GODIVAはtimes romanからtrajanに変えて、その後さらにtarajanからセリフを取り去った。こちらも字間を空けている。
元の設定では小文字を使った時に見栄えが良くなるバランスとなっているので、ロゴなど(=大文字のみ)ならば間隔を広めにとった方が美しく見えて「王道感」が出る。(逆に例えば、ドルガバも同じくfuturaだが、こちらはアバンギャルド感を出すために字間をギリギリに詰めている。)
また、碑文モチーフ以外には銅板印刷モチーフも王道感が出る。
フランスの紅茶マリアージュ・フレールやディーン&デッルーカなどに使われるcopperplate gothic、ピエール・マルコリーニのsackers gothic、Diorのnicolas cochinなど。snell roundhandのようなスクリプト体と組み合わせると効果抜群。
ファッション誌ではdidotやICT bodoniなどが使われがち。文字自体はシンプルだが、細い部分が繊細さを醸し出している。
HelveticaはルフトハンザやNY地下鉄などの交通関係におけるコーポレートタイプとしてよく使われる。またFENDIのロゴにもなっている。字が開いていて記号のように見やすいFrutigerはシャルルドゴールやヒースロー、インチョンなどの多くの空港、さらにはJRのプラットホームの表示にも使われている。サンセリフに革命を起こしたフォントの一つ。
dysonのロゴはhoratioを応用している。
パリの地下鉄は文字通りmetropolitainesというフォントになっている。(というか、このロゴを作った後でフォントになった)
Courierはタイプライターで打った感じがそのまま出るから、無機質な表現にぴったり。『ハートロッカー』『ジョニーは戦場へ行った』で使われているのも納得。
大文字と小文字は組み合わせても大丈夫。見た目のバランスが大事。(suntoryやbraunのひげそりなど。)
最近は大きくてもlightなフォントが多い。うるさくならないように配慮しているのかな。
AやVの太さが微妙に違うのは、昔の碑文などは筆で下書きしていたのを基にして作られていたから。サンセリフでも完全に同じ太さではなく、目の錯覚に合わせた微調整が施されている。
合字をきちんとするのは欧文組版のプロとしての最低条件。これができてないと即失格。
―余談
フォントの神様曰く、はんなり明朝は美しくないそうな。「○○ってフォントがかっこいいよ!」といただの知識ではなく、フォントの良しあしを見分けられるまでの知恵が身に付いたらいいんだけどなあ。まあ、知識の積み重ねが知恵を生むのだけれども。やっぱりデザインのセンスを持っている人はすごいなあと感じる。文章と同じで、(頭を働かせたうえで)数をこなすのが一番の近道なのだろうなあ…。